Zombie魚

      2017/04/14

全然書きたいこと思い浮かばないのでへんな記事を書ます。き

これはぼくの友達の話なんだけど……という事にしておこう。

毎度おなじみのふるいふるい話が始まります。

 

 

 四月っぽい変な話!

 

とある会社に入社したての頃、大企業に入れてうれしまみれだった彼は、期待と緊張をお供にして先人達の話をよく聞いた。

 

彼はひどい人間だったので、同期の同僚と喋るや否やすぐさまランク付けをし、有益でないと感じた同僚のアドレスを片っ端からブロックに突っ込んだ。 Aと言われてBと返すことの出来るグループが生まれ、同時にのけものも生まれた。

 

彼は仕事を覚えるのが苦手ではなかったし、先人達に対して敬う気持ちを持っていた。 人間語が通じない先人も当然いたけれど、それはそれとしてうまくかわし、入社間もなくとしては同僚や先人達から上々の評判を得た。

 

彼は自分のことをよくない人間だと心得ていたが、その上で自分という人間に満足していた。 いい感じの会社、先人達、同僚、仕事の内容、福利厚生や給料、どれをとっても彼が定めた世の中の平均以上であることは、バイトを含めた今までの浅い人生経験と照らし合わせても間違いなかった。

 

彼は色々な事に満足していた。

 

ただひとつ、仕事の中身を除いては。

 

仕事の内容は難しいものではなかった。 知識が必要とはいえ、誰でも時間を掛ければ覚えることが出来るものだった。 特別嫌がる理由も無かったが、彼にとっての仕事とは、ただ単につまらないものだった。

 

先人達は言った。

仕事が面白いわけないだろう。 最初はそんなものだ。 自分で工夫して面白くしないと。 仕事が面白いと思ったら一人前だ。 若いんだから色々やってみないと。

 

彼は先人達の言葉を鵜呑みにして何年も仕事を続けた。 新しい仕事も覚えた。 様々な人と知り合った。 会社の中でできる事を色々とやってみた。

 

それでも仕事が面白いとは一度も思わなかった。

 

とりあえずゲームしよう!という気持ちを抑え、彼はある休日を利用して深く深く考えてみた。 自分にとっての仕事とは? お金を得る手段だろうか? 楽しいものだろうか? 生活のため? 大企業という肩書き? 満足感とはなにか? 一体なにをしたいのか? なぜ考えたい事がある? 偉くなれば変わる? 結婚すれば変わる? 明日死んでも悔いは無い? 人生の目標は? 左右反対の自分に問いかけた。

 

目が死んでる。

 

感情が死んでる。

 

最後に一生懸命になったのっていつだっけ。

 

高校の球技大会とか?

 

社会人になってから良かった事がひとつも思い浮かばない。

 

休日に友人たちと旅行に行ったりとか。

 

ゲームのイベントで熱くなったりはした。

 

会社のことは何も思い出せない。

 

そうか、合ってないんだ。

 

ここは自分の居場所じゃない。

 

ぬるま湯きもちいいから出たくない。

 

気が付いてしまった。

 

何もかも順風満帆だと思っていたが、彼が求めているものはその会社には無かった。 仕事とは楽しくないもの。 死んだ目で月曜から出社するもの。 でも、そうでない人もいるはず。 ワクワクしながら仕事に行く人間だって居てもいいはず。 そうなりたい。

 

彼は脱出船の製作を密かに進めた。 飲み会を断るのが面倒になり、上司にわざとらしく悪態をついてみた。 それ以降飲み会に誘われなくなったが、どういうわけか部署が変わった。

ある日彼は同僚に聞いてみた。 休みの日は何してる? 最近はパチンコかな。 あと、あばばばばっていうスマホゲーもやってるよ。 ガチャに数十万突っ込んだけど後悔してない。

 

羨ましい。

自分は一流消費者としての人生を楽しめない事に気が付いてしまった。

純粋な生き方が羨ましい。

余計な事を考えるこのひねくれた脳みそと交換して欲しい。

 

彼は会社を去った。 同僚も上司も後輩もそれなりに別れを惜しんでくれた。 それについて思う事は何もなかったが、長年お世話になった社食のおばちゃんに「おいしい料理をありがとう」と忘れずに挨拶する事ができた。 おばちゃんは泣いて挨拶を返してくれた。  この会社で良かったと思える思い出がひとつだけ生まれた。

 

一人ひとりの人間がそれぞれ異なるはかりを持っている。 基準も目盛りもばらばらだ。 天秤が軽いうちに、古くなって壊れないうちに大事な選択ができてよかった、と彼は思う。 はじめから自分の道を歩けている人間のなんと幸せなことか。

 

雨風を凌いで眠れるだけ幸せだ。 明日の飯の心配をしなくても良いだけ幸せだ。 そんな弱気な考えは犬に食わせて、棘のある人生を。 もし自分に子供が出来て、今の仕事をしている姿を見られた時、憧れを抱かせる事ができるだろうか? ただそれだけの話だった。 欲をひとつだけ持っていいとするなら、ここにしたい。

 

 

 

彼は今、死んだ目でPC画面を見ている。 PCはまともに挨拶もしてくれない。 こちらが格下だと思っているのだろう。 事実、画面と向かい合っている彼はド新人で素人だし、PCにとって彼のレベルはゴミ以下だ。

 

「おれをのけものにするってわけか、じょうとうだ」

 

とりあえず今、目の前がまっくらな彼の心は輝いている。

 

……気がする。

 

つづく

 - 雑記